■ B



お姫様抱っこをしようと、わたしの腰に腕を回して斜めに身体を傾けたツヨシを慌てて拒否した。


ピョンって後ろに飛びよけたわたしに、微妙な顔のツヨシ。


だって、恥ずかしすぎるよ、そんなの。




「だだだだ、大丈夫だから。自分で歩けるから!」


「つまんねぇな」


「なにが?」


「いや、ユカリに触れると思ったから」


「触れるじゃん、いつでも」


「…冗談だって、本気にすんなって、これでも緊張してんだ、今日は…」




カアッて真っ赤になった頬を隠すように、顔を背けたツヨシは、誤魔化すように首をコキコキ振っている。


わたしの前にある大きなその背中が愛しくて…


ツヨシも緊張していることが分かって嬉しさがこみ上げた。


わたしだって緊張してるし、でもそれ以上にツヨシにいっぱい愛されたいって思いが強いなんて…




「早く夜にならないかな?」


「…あぁ」


「ツヨシ」


「ん」


「手」


「あぁ」




差し出した手をしっかりと握り締めてくれるツヨシに駆け寄るわたしは、この夜を一生忘れない…―――






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