■ I
初めて「ロミオとジュリエット」の映画を見た時、あんな風に愛を語り合う恋人たちを素敵だと思った。
甘い恋愛映画なんて、数えきれないほどある中で、わたしが惹かれたのは「ロミオとジュリエット」だった。
敵対するキュピレット一族であるロザラインに逢いたいがために乗り込んだキュピレット家のパーティーで、一人娘のジュリエットに出逢った瞬間に、恋に落ちたロミオ。
二人は一瞬ののちに惹かれあって、愛を語らい結婚の約束をして、別れる。
その別れ際の台詞を、わたしは今も忘れられないでいる。
“朝がくるのが待ち遠しいなんて…“
ツヨシの言葉が耳に頭に、身体に染み付いて離れない。
あれほどまでに和也くんを好きだと言っていたのが、つい数週間前。
人の気持ちとは、こんなにも簡単に変わってしまえるものなんだろうか。
「帰りたくない…」
「帰せねぇ…」と言ったツヨシの言葉に対してのわたしの回答はいとも簡単に、すんなりと出てきた。
まさかの自分がこんなに甘い言葉を口にするなんて、思ってもみなかった。
そう思ったのはわたしだけじゃなくツヨシも一緒だったみいで、大きな目をパチクリさせて、わたしを腕の中から解放した。