■ F
いつどこで、どんな運命が待っているのかなんて分からない。
でも、N高に入ったことも、S高に行かなかったことも、わたしが和也くんを好きになったことも、全部が今ツヨシとこうして手を繋いでいることに繋がっていて欲しいと、願わずにはいられない。
「ツヨシ…」
「え、なんで泣くんだよ?」
ツヨシの前で泣いたことはあるはずなのに、まるでわたしが始めて泣いたみたいにオロオロするツヨシに、わたしは腕を伸ばしてギュウっと抱きついた。
壁にトンって背中を預けるツヨシは、わたしを優しく抱きしめ返してくれて…
「どうした?」
優しい声でわたしの髪と背中をゆっくりと撫でてくれる。
「…嬉しいの」
「…うん」
「好きだよ、ツヨシが…」
「…分かったから、もう言うなよ」
顔を上げたツヨシは真っ赤で、わたしの頬をギュって抓った。
「ここじゃお前に何もできねぇだろ」
そんな甘い言葉が続いて…―――