■ E
言われて思い出す光景はあまり気持ちのいいものじゃない。
できれば封印してしまってもいいかなってくらいの出来事で。
単純にS高の先輩にナンパされて困っていた友達の前に出て、なんか喚いたのを思い出す。
でも何を言ったかとかは覚えてなくて、あの時は必死で友達を守らなきゃ…って、それだけだったから。
「見てたの?」
「たまたまな」
「…それで?」
「あぁそんで、気の強い女だな…って思って。でもよく見たら足開いて踏ん張って、手が震えてたからこいつも怖えぇんだって。友達守る為に前に出てきたんだって…あとは単純に、泣きそうなのに威張ってるお前の顔が可愛かった…って。そっからオレは猛勉強だよ。絶対ぇ同じ高校行ってやるって…したらお前いねぇし…。マジ焦った。すげぇ探した。正直名前も分かんねぇし、どうしたらいい?って思ってたら、ミツルが女できた…ってお前と沙和が一緒に写ってるプリクラ見せられて…見つけた!って…」
…ツヨシ、元から不良じゃなかったの?
「でもお前は和也さんが好きだって…世の中間違ってねぇ?って凹んだわ、全く。…けど…捨てたもんじゃねぇって…」
ツヨシの手がわたしを追ってきて…
「ミツルにすげぇ頼んでオレもoneに入れて貰って…そうそう入れねぇみてぇだけど、ミツルが色々やってくれて…とりあえずすぐバイクの免許取りにいって…喧嘩の仕方も教わって……やっと手に入れた…ユカリのこと…」
頬を包み込む大きな手は、緊張しているのか、微かに震えていて…
もしも、わたしがS高に行っていたら?と、思わずにはいられない。