■ C
呆然とするわたしに、ツヨシの顔が近づいて…
「ユカリ、どうした?」
そう聞いた。
わたしの腰に回した腕を引き寄せて耳元に唇をくっつけてそう言うのは、わざとなのか、嫌がらせか…?
偶然なのか、悪戯なのか…
もし、わたしが和也くんに出逢ってなかったのなら、普通にS高に行ってツヨシと出逢っていたんだろうか?
わたしがどこにいても、ツヨシはわたしを好きになってくれたんだろうか?
「ツヨシ…」
「ん?」
「いつからわたしを好きだった?」
「…えっ…」
腰元の手が軽く緩んで一歩わたしから離れるツヨシは、動揺しているのか、ちょっと焦ったような気まずいような表情を浮かべている。
その顔の裏に隠されている真実を知りたくて…
以前にわたしをどこかで見かけていたんだろうか?
あのミツルくんの紹介後に好きになったとはとうてい思えない程に、ツヨシは最初からわたしに優しかった。
もし、わたしがS高に行ってれば…
赤い髪の毛を掻き揚げて視線を泳がせていたツヨシは決心したようにわたしを見つめた。