■ A
「何か用?」
江美香の質問に答えることなくそっけなく言葉を繋ぐツヨシ。
ポケットから腕を出して、その手をわたしの腰に回した。
「付き合ってんの、ユカリと?」
そう聞いたのは江美香で、わたしと江美香が友達だったってことにツヨシが吃驚した顔を浮かべた。
「あ、同じ中学だったの。ね、江美香」
「…うん。ユカリあたしこの前メールしたんだけど、返信まだなんだけど?」
…初暴走の後、oneに入ったって噂が流れて、この江美香からもそんなメールが来ていたけれど、結局わたしは誰にも返信しなかった。
あの日は、物置に閉じ込められて…結局和也くんに怒鳴られて…
ツヨシもわたしのせいで怒られて…
とてもじゃないけど、人にそれを説明する元気もなかったんだ。
「ごめんね、ちょっとバタバタしちゃって…」
「何か用かよ?」
わたしの言葉に上から被せるように、ツヨシが不機嫌な声でそう言った。
「え、別に用事はないけど…」
「じゃ行こうぜ、ユカリ」
グイってわたしの腰に回した腕を引き寄せて、身体でわたしを誘導するツヨシ。