■ G
グラって視界が揺れて、わたしの上には真剣な顔の臣。
両腕を握られてしっかりとわたしの上に身体を乗せている臣。
「バカ言うな」
一言答えた臣の掠れた声に、キュンってする。
「バカってなによ?」
「いいのかよ、もう」
「なにが?」
「直人さんのこと…好きなんだろ、お前は」
沙和もエリーくんも、そして臣もずっと言わなかった直人くんのこと。
わたしに気を使って何も言わずにいてくれているのは分かっていた。
最初は確かにショックだった。
完全に直人くんを怒らせて嫌われたわたしは、直人くんを好きでいる資格さえもない気がして。
直人くんのことはあくまでキッカケで…
「臣のことが好きだよ」
「………」
「好きじゃなきゃデートなんかしないし、こんな所も二人で入らないよ」
「…ユカリ」
「何にもされないから、臣は責任感じて傍にいてくれるだけだって思っちゃう」
「…マジか?」
驚いた顔を見せる臣は、全くわたしの気持ちに気づいていなかったようで、既に頬が緩んでいる。
超至近距離で鼻と鼻がくっついてしまいそうな距離でわたしを見下ろす臣は、きっと顔が赤くなっていると思う。
見上げるわたしも、顔だけに留まらず、全身熱くなっていて、早く触れて欲しいなんて思ってしまう。
「もう遠慮しないでいいよ」
「…しねぇ…」
そう嬉しそうに言った臣が、近すぎるその距離を埋めた…―――