■ B
「沙和――!」
下駄のせいで、走りづらいからとりあえず声を出して存在を明かす。
でも、振り返った沙和の顔は、大きく口を開けて固まっていて…
「ヤバイだろ」
届いたのは、焦ったようなエリーくんの声。
「ユカリ、髪どうしたの?」
沙和が困惑した声でそう聞く。
昨日までのわたしとは違う、赤い髪を指差して「これ?」って聞き返すわたしに、「うん」ってだけ答える沙和。
「うん、染めた!変かな?」
「いや、変じゃねぇけど…ケンチさんに言われたこと忘れたのか?」
いつもチャラっとしたエリーくんの真剣な声色に、ちょっとだけ後退りしたくなったけれど、今更変えられないのは確かで。
大きく息を吸い込むと、わたしは腰を曲げて深く頭を下げた。
「ちょっと、ユカリ、何?」
慌てたような沙和の言葉と、わたしを掴む細い腕。
沙和に頭を上げさせられたわたしは、視線をグッと沙和に向けた。
ゴクっと沙和が唾を飲み込む音が聞こえて、わたしはほんの少し口元を緩めた。