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「ユカリ連れてきたの?」


「…はい」


「…そうなんだ」


「ゆきみさん?」


「なに?」


「あの俺…」


「うん?」


「いや…その…」


「無事でよかったよ、ユカリが。広臣は大丈夫なの?」


「たぶん」




どうして直人くん、敬語なんだろう?


呼び捨てもしてないし。


そんな直人くんの事情が分かるわけもなく、わたしを見つめていたゆきみの視線が離れていく。


向かっているのはVIPで、歩いていくゆきみを追って直人くんが腕を引いた。


足が止まったゆきみに、聞こえるのは沢山のバイク音。


その音に反応するかのようにゆきみが直人くんの腕を離して、走って行く。




「哲也、帰りたい」




ギュってセカンド哲也の腕に巻き付いているゆきみは、どうしてか元気がないように見えて…―――



哲也は直人くんをジロっと睨むと、それからやああってゆきみの髪をスッと撫でた。


顔を覗き込んで優しく微笑む哲也は、文句なしにかっこいい。




「疲れたか?」




聞きだす声も優しい。


ゆきみは甘えるみたいに哲也を見上げながらも頷いて…




「俺ん家来るか?」


「…うん、早く…」


「クッ、誘うなよな、こんなとこで」




ゆきみの肩に腕をかけて、そのままフワっと顔を寄せる…―――



…生キス、二回目ですけど…。


哲也は本当にギャラリーいっさい無視なのね。


確実にディープキスだろって思うような動きを見せながらも、そのまましばらくキスを繰り返したあと、ケロっとした顔でゆきみを抱えるように抱きしめて歩いていく哲也。





その後ろ姿を見つめるのは、直人くん。


そんな直人くんを見てしまう、わたし。


その後ろ、「ユカリ」聞きなれた臣の声に振り返ると、ちょっと傷ついた顔の臣がわたしをギュって抱きしめた。


肩に顔を埋めるみたいにわたしを抱きしめながら…「無事でよかった」掠れた声が届いた。







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