■ G



「はい、すみませんでした」


「別にお前のせいじゃねぇ。あの道を選んだ俺のミスだ、悪かったな」


「そんな、直人くんは悪くないですっ!」




何のフォローにもならない言葉しか出てこなくて…




「変な奴だな、お前」




そう言って、ほんの少しだけ口端を緩めた。


初めてわたしに対してそんな顔を向けてくれて…


平行線だと思っていた恋の道が、ほんの少し緩くなったと思いたい。


それはあくまでわたしの願望に過ぎなくて、実際は何も変わっていない平行線を、緩まったと勘違いしてしまうのは、単なる恋愛経験の無さからくるものなのかもしれない。




「直人くん、明日の花火は行きますか?」


「…は?」


「花火大会、明日行きますか?」


「あぁ、うん」


「わたしも行きます!」


「…そ」


「はいっ!直人くんに見立てていただいた浴衣着て、行きます!」


「別に俺が見立てたわけじゃねぇだろ」


「いえっ、直人くんの意見を参考にしました」


「あっそ」


「楽しみですねっ」


「…そうだな」




クシャ…って、直人くんの手がわたしの解けた長い髪を撫でた。


キュンってする。


こんな風にわたしに笑いかけてくれるなんて、嬉しすぎる。



完全に舞い上がっていたんだ。


でもそれが直人くんを苦しめることになるなんて、気づきもしなくて…―――


だからそのクシャって仕草が、臣の癖だと思い込んでいたわたしは、そうとうのバカ女なんだって。






「直人?」




聞こえたのは綺麗なソプラノボイス。


わたしと直人くんを見て、不思議そうに首を傾げている。


あっという間にわたしから離れてゆきみに駆け寄る直人くん。


当たり前ともいえるその行動に、わたしは少しだけ切なくなった。




「喧嘩、大丈夫だったの?哲也様子見に行ったけど、戻ってたんだ直人」


「あ…うん」




気まずそうに言葉を発する直人くんに、ゆきみの視線が飛んでくる。






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