■ B



「………」




何かを言おうとして、言葉を飲み込んだ直人くんは、そのまましばらく何も話さなかった。


ゆきみもただ、無言で直人くんの隣にいるだけ。


どうしても、この二人は何かがあるんじゃないかって思ってしまう。


哲也やみんなには内緒の気持ちが、この二人にはある気がしてしまうんだ。


哲也が傍にいない時、ゆきみと二人っきりの時だけ、直人くんは「ゆきみ」って呼び捨てにしている。


そこに意味が含まれていないかもしれないけれど、意味があるようにも思えて…


やっぱりわたしは、それを羨ましく思うんだ。





「ユカリ」




グイって不意に、臣の腕がわたしの肩に回されて…

あの二人を見つめていたわたしの意識は臣に戻された。




「なに?」


「今日は守りきるから、お前には誰も触らせねぇ」




臣はあの日のことを気にしているみたいで、臣が悪いわけじゃないのに、あの日も何度も何度も謝られた。

責任感が強いのも、臣の性格なんだってわたしは思った。

そしてそれも臣の優しさに繋がっているものなんだと。


そうやって臣がわたしに恐怖心を埋めつけないようにしているのが分かるし、「臣のせいじゃない」って言ったところでカレは納得すらしないから…




「ありがとう、臣」




そう言ったわたしに、優しく微笑んで「…あぁ」って続いた。





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