■ F
思わず臣の方を向いたわたしに、やっぱり照れたようなぶっきら棒な顔を浮かべている臣。
でもその瞳は優しくて…―――
「オレがこいつにベタ惚れなんっす」
そう続いた。
見つめ合ったままそう言われて…お芝居だけど、物凄いことを言われて、わたしの中の引き出しは全開で、答える言葉も見つからない。
「どうしても欲しくてエリーに頼み込んで紹介してもらったんっすよ」
ドックン、ドックン…早鐘のように心臓が鳴っていて、いつの間にか肩に回されていた臣の腕が、わたしの長い髪をクルンっともて遊んでいる。
「まぁ、今はお試しみたいな感じっすけど、絶対ぇ本気にさせてみます」
臣の言葉にキャーキャーするゆきみと奈々。
人の恋路には全く興味のなさそうな哲也。
反対に、興味津々のタカヒロ。
どっちでもないって顔のケンチくん。
…直人くんの顔は、見れなかった。