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「哲也拗ねた?」




小悪魔ゆきみは哲也を振り返って上目遣いでそう聞く。

ほんの一瞬目線を泳がせた哲也は「ここで抱いてやろうか」って言葉。

さすがのゆきみもビクっとして、「それは困る」って真っ赤になっていて…


こんなやり取りがこの人達にとっては当たり前なんだって。

わたし達の前で見せる印象とはかけ離れていたけれど、こっちの方がずっと人間っぽくて、感情も沢山見えていいなぁ…なんて思った。


そんな人達だから、あんなに沢山の人がついていくのかもしれないって。


ただ怖いだけじゃなくて、こんな風に可愛らしい、普通の高校生なんだって、それが知れてわたしはやっぱり嬉しかった。

この中にいる直人くんが本来の姿なんだって。


やっぱりゆきみはすごいんだって、羨ましさは消えないけれど。

直人くんとまともに話しができるゆきみに憧れてしまう。



そんなことを永遠考えていたわたしに「お前ついてんぞ」って横から臣の声が届いた。




「ん?」


「んじゃねぇ。たく…」




臣の手がおしぼりを持ったまま近付いてきて、その手がわたしの口元を拭った。




「マヌケな顔だな」


「…わ、ごっごめんっ…」


「ほら、動くなって」




…超恥ずかしい!

しかも普通に拭くし臣ってば。






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