■ C
「哲也拗ねた?」
小悪魔ゆきみは哲也を振り返って上目遣いでそう聞く。
ほんの一瞬目線を泳がせた哲也は「ここで抱いてやろうか」って言葉。
さすがのゆきみもビクっとして、「それは困る」って真っ赤になっていて…
こんなやり取りがこの人達にとっては当たり前なんだって。
わたし達の前で見せる印象とはかけ離れていたけれど、こっちの方がずっと人間っぽくて、感情も沢山見えていいなぁ…なんて思った。
そんな人達だから、あんなに沢山の人がついていくのかもしれないって。
ただ怖いだけじゃなくて、こんな風に可愛らしい、普通の高校生なんだって、それが知れてわたしはやっぱり嬉しかった。
この中にいる直人くんが本来の姿なんだって。
やっぱりゆきみはすごいんだって、羨ましさは消えないけれど。
直人くんとまともに話しができるゆきみに憧れてしまう。
そんなことを永遠考えていたわたしに「お前ついてんぞ」って横から臣の声が届いた。
「ん?」
「んじゃねぇ。たく…」
臣の手がおしぼりを持ったまま近付いてきて、その手がわたしの口元を拭った。
「マヌケな顔だな」
「…わ、ごっごめんっ…」
「ほら、動くなって」
…超恥ずかしい!
しかも普通に拭くし臣ってば。