■ A
わたしが何気なく言った直人くんへの気持ちに、沙和が初めてエリーくんのことを教えてくれて…
だから沙和がわたしを心配してくれる気持ちはよく分かる。
裏表なしに沙和を選んだわたしを、沙和も信頼してくれているんだって。
だから、沙和がOKを出した臣のことも、同じようにわたしは信じている。
この先、わたしが直人くんのことでどんなに傷つこうとも、沙和に心配かけちゃいけない…って。
そう確信したところで、ウェイトレスさんがわたし達の注文したランチを運んできた。
一緒に飯を食うといえど、その席順が変わることなんて当たり前になく、常連らしい直人くん達は、一番奥の一番大きな席を陣取っている。
わたし達はその横の四人がけの席に座らされた。
通路を挟んでいるけれど、わたしは直人くんと対面できるであろう、ケンチくんの隣に座った。
これなら直人くんの顔がしっかり見えるなんてちょっとした下心があるなんて内緒。
「直人それ食べたい」
そう言ったゆきみは、哲也が尋常じゃない距離にいるっていうのに、その顔をわざと直人くんに向けているようにも見えて…
食べたい!と言って直人くんの太股に手を乗せて身体を寄せた。