■ C
すごい!
直人くんがふざけたところなんて始めて見た。
あの哲也相手にあんなこと言っちゃうなんて、直人くんってやっぱりすごい!
感動していたわたし、臣の腕が肩をグイって引き寄せた。
「あれ?お前らも来てたんだ?」
優しい口調なのは、恋人がいるからだって、すぐに分かるくらいその顔も表情も優しい総長のタカヒロ。
「お疲れさまッス」
臣と、いつの間にか反対側にいたエリーくんも丁寧に頭を下げた。
チラっとタカヒロの視線がわたしに飛んできて、思わずドキっとする。
ブラウンのカラコンの入ったその眼は、ほんの少し怖い。
全てを見透かされてしまいそうな気分になる。
だからわたしは臣にほんの少し引っ付いたら、わたしの肩に回している手に力が込められる。
…こういうの、守られてる気がして…
もしわたしが直人くんを好きじゃなかったら、臣を意識していたのかもしれない。
でもそんなことは今更有り得なくて、わたしの視線はタカヒロから外れて当たり前のように直人くんに注がれている。
直人くんは一瞬だけわたしを見て、そのままゆっくりとその視線をわたしの手元に移した。
ゆきみ色の浴衣を手にしていたわたしは、ハッとしてその浴衣を後ろに隠した。
確実直人くんに見られたって分かってるけど、やっぱり恥ずかしい。