■ A
「なんだ、お前?」
「な、なんでもないよっ」
「変な奴だな」
そう笑ってわたしの髪をクシャって撫でる臣。
最近どうも、臣はよくこうしてわたしの髪なり、頭を撫でることが増えた。
それはきっと臣の癖なんだって、そう思っていたのに…。
それ以外の理由なんてないと思っていたのに、わたしはその理由にすら気づこうともしなかったんだ。
小さな臣の優しさに、気づかないフリをするしかできないなんて。
「で、どうすんだ?」
「うん、やっぱ浴衣着たいから…臣も着れば?まぁ、背も高いから似合うと思うよ?」
「…まぁ…で悪かったな。つーか、んな動きにくい格好するわけねぇ」
「ねぇ、こっちとこっちどっちがいい?」
「お前オレの話無視かよ?」
「ねぇどっち?」
暴走の日は必ず臣が学校裏の公園まで迎えに来てくれていて、沙和とエリーくんと四人でご飯を食べたりして過ごしていた。
今日は終業式だけで、午前中に学校が終わったから、その足で花火用の浴衣を見に繁華街まで来ていた。