■ D



うそっ!

見上げる先、直人くんの不機嫌な顔がこっちを見ている。


自販機の影に隠れていたはずが、自販機に寄りかかってボーっと自分の世界に入っていただろうわたしは、簡単に直人くんに見つかってしまうなんて。




「お前何してんだ、そこで」


「えっ、っとジュースを買いに」


「嘘つけ」


「…あの、…すいません」


「勘弁しろよ」


「…あの直人くんっ」


「んだよ」


「ゆきみ先輩のどこが好きなんですか?」




人には触れられたくない部分がある。

わたしの能天気な頭でそれが分かるわけもなく、目の前の直人くんの目つきが一気に怖くなった。


自販機に寄りかかっているわたしは当たり前に後がない。

それなのにわたしに近付く直人くんは、血の通っていないみたいな冷たい目をしていて…





ガンッ!!

わたしの後ろの自販機を殴りつけた。




「お前には関係ねぇ、余計な詮索すんじゃねぇぞ、クソ女」






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