■ D
「その髪、ゆきみちゃんにそっくりなんだよ」
「…えっ?」
直人くんの音が完全に消えると同時、ケンチくんがわたしに向かって苦笑いを飛ばした。
煙草を持ったままケンチくんがわたし達の前にあぐらをかいて座って、小さく息を吐き出した。
「ユカリだっけ?」
「はい…」
「その長くて緩いウェーブのかかった綺麗な髪、ゆきみちゃんにそっくりで…だから直人が気にしてるの、仕方ねぇ…。せめて髪結んでやってよ、直人の前では…」
「…はい」
「ゆきみちゃんだと思われたら、マジで色んな奴に狙われることもあるから…その度に直人はいつもゆきみちゃんを守りに行ってるからさ…」
ケンチくんの学校とはやっぱり少し違う優しい口調に、わたしは胸がキュっと痛かった。
初暴走、まさかの赤札をもらったのは、わたしが最初で最後かもしれない…―――