■ A
「臣大丈夫なの?」
「ユカリ…」
「沙和、臣の容態は?」
「ユカリ落ち着いて!」
沙和に肩を押されて立ち上がろうとしたわたしは、ソファーに押し戻された。
まさか臣になんかあったの?
だって、絶対戻るって約束した…信じろって…
わたしだけ助かったって嬉しくもなんともないよ。
「大丈夫だって言ったのに…かっこつけてわたし守ってくれたのに…側にいなきゃ意味ないじゃんっ!」
最後の方は、涙で声が震えていた。
感情的に言葉を吐き出したわたしに、「勝手に殺すなよ」って声。
見上げた先に、手足に湿布やら包帯やらを巻いて白くなっている臣が笑っていた。
「おう、大丈夫か?」
そんな臣に向かってエリーくんが心配そうな顔を飛ばしている。
「大丈夫じゃねぇなー…あの部屋は地獄だ」
そう言って臣はわたしの隣の空いたスペースにドスンと座り込んだ。
ジーンズのお尻ポケットから煙草を取り出すと、我慢していたようで嬉しそうにそれを口にくわえて火をつけた。