■ B




「クソッ!!」



そう臣が言葉を吐いて…。


嫌な汗がわたしの背中を伝っていく。




「降りろ」


「えっ?」


「早く降りろっ!」





急にバイクが止まって、強引にわたしを降ろす臣。

物置みたいな場所に押し込まれて、息遣いの荒い臣の顔が近づいてくる。


両手で頬を包み込まれて「ユカリ、聞け」耳元で小さく囁いた。




「絶対ぇ戻ってくっから、ここから一歩も出ねぇでくれ」


「…え?臣は?」


「俺は大丈夫だ、お前には指一本触れさせねぇから、信じてくれ…」





全く真実味のないその言葉に、わたしはそれでも頷くしかなくて…。

この人は本気でわたしを守ってくれるんだって、思えた。


それが、このチームのルールなんだって。




「分かった」


「おう」




頬に触れる大きな手が、わたしの頬をスッと撫でると、ガシャンと扉が閉められた。


その後ガシャンって鍵のかかる音がして、小さくなっていく臣の足音。


そのまま少し遠くでバイクの音が再び鳴った。


真っ暗で身動きも取れない物置に閉じ込められたわたしは、ただ臣が戻ってきてくれるのを願うことしかできない。


自分がこんなにも無力だなんて、悲しくて、でもこの行き場のない思いを零すこともできない。



助けて、直人くん…―――






- 20 -

prev / next

[TOP]