■ E



視線の先の直人くんは驚くくらい優しい顔で、隣に座っているゆきみ達と喋っている。

ゆきみの隣には、奈々。

三人で盛り上がっていた。



あんなに自然に笑う直人くんなんて始めてで…

学校にいる時もそりゃあゆきみの前では笑うけど、愛おしそうに微笑むってゆうか…

あそこにある光景が、すごく自然な感じがして、やっぱりわたしは胸が痛くなった。




「ユカリ、大丈夫?帰りたかったら帰っていいんだよ?」




沙和がわたしの腕を掴んで耳元で小さく言った。

直人くん目当てで来たことが他の誰かにでもバレてしまったら大変だからって、誰にも聞こえないように、わたしだけに聞いてくれる。

沙和の優しさにほんの少し胸の痛みが和らいでいく気がした。



「大丈夫、うん大丈夫。何でもないから、気にしないで」



無理に笑ったつもりはないけれど、沙和からしたらそう見えたのかもしれない。

やり切れない…って顔で少しだけ微笑んだ。

そんなわたしを少し離れた所から見ていた広臣くん。

ゆっくりとわたしに近付くと、グイって腕を引っ張られた。




「今から哲也さんに挨拶行くから、自分の名前しっかり言えよ?」




そう言われて、目が点になった。

だって、「哲也さんに挨拶行く」って言わなかった?


哲也さんって、この団体を取り仕切る二番手だよね?

要するに、直人くんが好きなゆきみの彼氏って奴。





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