■ A
「…傷つくだけなのに?」
「うん、傷ついても…止められない」
「もう…。でも絶対無茶はしないこと!直人さんといえど、怒らせたらヤバイからね」
「うん、ありがとう」
しぶしぶ受け入れてくれた沙和が、こんなにも真剣に忠告してくれたのに、わたしはただ直人くんに近づけるなんてお門違いな自惚れをしていたのかもしれない。
「沙和、ユカリ、行くぞ」
廊下から聞こえたエリーくんの声に、わたし達は机の横のフックに引っ掛けていたスクールバックを手に、立ち上がった。
金よりの茶髪で、超眉毛の細いエリーくんは、ドレッドヘアーの三つ編みを靡かせてダラダラと歩いて行く。
思いっきりトランクスが見えてますけど…ってくらいの腰パンで、正直短足にしか見えない。
この腰パンの何がいいのかすら分からないわたし。
隣を歩く沙和の腰に腕を回して歩くその姿は、哲也とゆきみのようだった。
四階の下駄箱を出て外に行くと、正門前にoneの面子が溜まっていた。
エリーくんはしっかりとそこに頭を下げて、それから学校の外にある公園に行く。
そこにはoneの面子のバイクが沢山停めてあって、そこには総長タカヒロや、セカンド哲也のものもあるらしい。
そしてわたしの好きな直人くんや、ケンチくんのものも…