出逢い2
システムエンジニア御一行様が到着すると後輩達から小さな歓声があがった。
もっとインテリチックなのかと思ったけど、想像よりやんわりとして見える彼ら。
どうやらみんなの狙いは青柳さんのよう。
「一人仕事抜け出せなくて、少し遅れてくるんすけど、先に始めちゃいましょう!」
そんな声と共に開催された合コン。
正直、20代前半の頃に行ったっきりだから、合コンで何をするのかなんてわかっていない。
「じゃあまずは自己紹介お願いします」
だからみんなの出方を見守っていたんだけど…―――合コンって、こんななのっ!?
だって年収から自分と付き合ったらこんなメリットありますとか、そんなの結婚相談所じゃないわけ!?
うわ、ダメだ。
このノリダメだ、私帰ろうかな…
額に手を当てて俯いた瞬間、天使の声もとい、私のスマホに会社からの着信が入った。
「ごめんなさい、仕事の電話が。少し席外しますね…」
そう言って誰に頭を下げるわけでもなく、ペコリとして私はこの個室から出た。
目の前に電話をしているメンズがいて…
黒縁眼鏡の下、目が合うと軽く私に会釈をした。
慌てて下げ返して着信をとる。
「上杉です、お疲れ様です…」
すぐに仕事のことの脳内は切り替わったものの、なんかその、めっちゃイケメンじゃない!?
この人、もしかして、遅れてきた人かな?
なんとなく気になって電話応対しつつも何度かちら見をしてしまった私に、同じように何度か彼の視線が飛んできたなんて。
見れば見るほどかっこよくて…っていうより、美しいって言葉が一番似合っているのかも。
男でこんなにも顔が整っている人、初めて見た。
声も、素敵だし。
「「じゃあそういうことで」」
まさかの同じ台詞で同時に電話を切った私達。
顔を見合わせて笑った。
「あの、ここですか?」
個室を指さしてそう聞くとニコっと微笑む。
「はい。土田といいます」
「あ、上杉です!初めまして」
「上杉さん。仕事、大変なんですね?」
「土田さんも。抜け出せなくて…って言ってました」
「まぁこの歳になると色々任されることも多くてね。今日は無理やり後輩達に連れてこられて…じつはあんま乗り気じゃなくて…」
「うそ、私もです!お局ポジションの私なんて単なる人数合わせですよ。自分から合コンなんてとてもじゃないけど…」
「けど来てよかったかも」
そう言って微笑む土田さんにズキュンって…―――
恋なんてもうしないもんだって決めつけていたけれど…
「中、入ろ?」
「あ、はいっ」
「ね、下の名前は?」
私の背に手をかけてゆっくりと誘導しながら、斜め後ろからそう聞かれて。
ドクンっと心臓が脈打つ。
振り返って「リコ…。上杉リコ」そう言うと「可愛い名前だね、リコちゃん」優しく微笑まれてまた、ズキュン…心臓が脈打った。
「あの、土田さんは?」
「テ・ツ・ヤ…」
耳元で小さく囁かれてズキュン…。
やばいってこれ、完全に落とされてるよね?
浮かれた気持ちでドアを開けた瞬間、土田さんを見た後輩達の目の色が変わったなんて。
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