運命の人3

見つめる哲也さんはそれでも優しくて、ちょっとだけ惨めに思える。


「哲也さんみたいにかっこいい人とこんな近づいたことがないから、戸惑ってます。私みたいな平凡な女、遊ばれるだけなんじゃないか?とか、ごめんなさい、でも、今日の今日で何も分からないし、自分に自信がないからどうして私なんかに構ってくれるのかも分からないし…」


気づくと哲也さんの温もりの中にいた。細く見えた腕はしっかりと筋肉がついていて私を抱きしめる腕は力強くて温かい。

それだけでちょっと泣きそうで。


「ばーか」

「…え?」

「でもそんなリコちゃんだから俺、好きなんだと思う」


哲也さんの言葉に溢れそうな涙も引っ込んだ。

…―――すき?


「え、あの…え、すき?」

「そうだよ。今日の今日で信用ないのも承知の上で言うけど。リコちゃんのこともっと知りたいって思ってる。少なくともリコちゃんは、表面上の俺じゃなくて、中身を知りたいって…さっきそう言ってくれたろ?初めてだった、そうやって本当の俺を知ろうとしてくれる子は。確かに顔だけで寄ってくる女は多いけど、俺の意外な中身知ったらみんな理想と違うって…簡単に離れていくんだ。だから恋愛なんてそんなもんか…って。適当に遊べりゃいいや…って思ってた時もぶっちゃけあった。けど寂しいじゃん。もしもどこかに本当の俺を見てくれる子がいたら…この命かけて愛して守っていくって決めてた」


そこまで言うと、いったん哲也さんは息を吐き出した。


「ごめん、緊張してる。ちょっと深呼吸…」


私の背中を撫でながら呼吸を整える。飄々と見えた哲也さんも、じつはそうじゃなかったんだって思うと、少し肩の力が抜けた気がする。同時に、この短時間でそこまで私のことをしっかり考えてくれていたんだって思うと、それはもう天にも昇る嬉しさだ。

確かに出逢ったのは今日で、しかも合コン。だけどどんな出逢いだったとしても私達の未来に繋がっている…―――そう思いたい。


「哲也さん…」

「うん。聞く覚悟できちゃった?」

「はい、できてます…」

「じゃあ言うね?」

「はい」

「俺も、リコちゃんのこともっと知ってもっと好きになりたい。僕の運命の人だって思ってる。結婚を前提に付き合ってくれませんか?」

「…はい」

「よっしゃ!」


ガバリと再び強く抱きしめられた。やば、男に抱きしめられるのなんていつぶり?この急展開を楽しんでいる余裕なんてないけれど、近づく哲也さんにそっと瞳を閉じた――――



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