常連化している私達は、ほとんど個室に通されることのが多くて。

個室だとゆっくりできるからそれも気に入っていた。


「広臣上着」

「サンキュー」


スーツを奇麗に脱ぐと、広臣の香りが鼻について思わずニヤける。

何で男なのにこんないい匂いなんだろうって思えるくらいで。

まぁ香水は香水だろうけど、この香りを嗅ぐととっても安心できる自分がいた。


「今日も暑かったねぇ」

「あ、臭かった?」

「違う違う…臭かったらさりげなくファブリーズしておくから!」

「うわそれ俺が見てない所で頼むよ…」

「冗談だって!いつもいい匂いだし、何か落ち着くよ」


自分のカーディガンもハンガーにかけて座ろうとした私の腕を掴んでグイっと引き寄せた。


「えっ!?」


あぐらをかいてる広臣の足の間に引き込まれてギュっと抱きしめられる。


「俺も落ち着く…ユヅキの匂い。すげぇいい匂い…」


たぶんそれは口実で。

ほんの一瞬目の合った広臣、すぐに私の背中に腕を回して甘い唇を重ねた―――


ずっと駅で逢った時から…うううん、むしろ昨日広臣と別れた時からもうずっとこうしたくて。

遠慮なく入り込む広臣の舌に自分のを絡ませた。

目を閉じるとそこはもう二人っきりの世界で。

ここがもつ鍋屋さんの個室だとか、いつドアが開いてもおかしくないとか、そんなことは頭の中からすっかりと抜けていて。

舌を重ね合わせて唇をつまむようにすぼめると広臣の分厚い舌で全部を舐められて呼吸があがる。

何度しても胸の奥がキュンっとしちゃう広臣とのキス。

ゆっくりと私の舌を舐めきった広臣はチュってリップ音を立てて唇を離した。


「…止まんなくなりそうーなんすけど…」


苦笑いでそんな言葉。

そんなの私も一緒だよ!なんて思うわけで。


「じゃあこのままここでする?」


冗談だって分かってるけど、冗談にしなきゃダメだけど…―――「シたい」素直にそう言う広臣が可愛くて、本気にしたくなる。


「ダ〜メ!だってここじゃ店員さんに見られちゃうよ、私の身体。いいの?」

「絶対ぇやだ」


子供みたいに顔をプウって膨らませる広臣の髪をそっと撫でると「ユヅキ」もう一度顔を寄せた。

小さく触れるだけのキスをした後、やっと私の腰に回した腕を解放した。

だから私も正面の掘りごたつに座ってメニュー表を取った。


「いつものでいっか?」

「うん。それで!」


そう言って広臣は店員を呼ぶボタンを押していつもの献立を注文した。