乗り換え駅のプラットフォームに彼の姿を見つけると思わず駆け寄って抱きつきたくなる。
私達があと5歳若かったらそうしているのかもしれないけど。
「広臣っ!」
名前を呼ぶと顔を上げて視線が合う。
耳につけていたイヤフォンを外してニッコリ微笑む彼、登坂広臣。
私の最愛の恋人。
「いつもごめんね、広臣のが早く帰れるのに…」
「いいよそんなの。今暇な時期だからユヅキと一緒に入れる時間増えて嬉しいもん、俺…」
えくぼを見せて笑う彼に胸がキュンっとする。
好きだなぁ…って思って。
思わず言葉にしたい気持ちを軽く抑えて私は彼の腕にキュっと巻きついた。
「えへへ。嬉しい私も」
「…可愛い…」
言い逃げって感じ、言うだけ言って目を逸らした広臣は大きく息を吐きだした。
手を繋いで駅の階段を下りる。
「飯、どうする?」
「どこでもいいけど…それじゃ困る?」
「うん。ユヅキが食いたいもん俺も食いたい」
歯の浮きそうな台詞も、広臣の声に乗っかるだけでそれは単純に嬉しくて、胸の奥がキュンって突かれてる感覚だった。
簡単に言っちゃうと私達はそう、族に言う「バカップル」だ。
お互い相手のことが大好きで。
なんなら相手のことしか見えてなくて。
でもそう思える相手と同じ想いを共有できることは、ある意味奇跡に近いんじゃないかと思う。
「そうだな〜…じゃあ鍋!もつ鍋食べたい!」
「お、いいね!じゃあいつもんとこ行く?」
「うんっ!」
私達がよく行く…というよりは、うちの会社御用達のお店へと足を運んだ。