諦めきれない恋の行方(17 / 30)

月曜日。

夜は待ちに待った直人さんとのデート。

その前にキスとかしちゃったけど。え、てことは、もしかして今日は朝までコース?

やばやば、顔が笑う。

大学の講義の最中、一番後ろの端の席で思いっきり寝息を立てていた朝海ちゃんの脇腹を小突いて耳元で小さく聞いたんだ。


「朝海ちゃん、コンドームちょうだい!」


パチッて目を開けた朝海ちゃんは、怪訝な顔で私を見た。

上から下までおもむろに見た後、「はっ?」て、聞き返された。


「だから、コンドーム、持ってる?」

「…ゆきみさん、使うんですか?」

「使うかもしれないから…」

「ごめんなさい、私持ってない。そーいうのはタカノリが全部やってるから」


そう言った朝海ちゃんはハッとした後誤魔化すよう笑った。

哲也さんに会いに昨日うちのバイト先に行ったって話をしてくれて、そこには私の知らない哲也さんがいっぱいいた。


「すごいなー朝海ちゃんてば。哲也さんとそんな話したなんて」

「ゆきみさんが、直人さんばっか見てるからでしょ!」

「…え?そう、かな…」

「そうですよ。私もバイトしよーかな、厨房で。てっちゃんに癒されたい毎日…」

「ダメダメ、朝海ちゃん可愛いから直人さんが好きになっちゃったら困る!絶対来ないで!」


断固拒否する私に、笑いながら「ゆきみさんがすきな男には絶対手出しません私!安心して!」…そーいえばそうかも。

高校の時からモテてたけど、私と被ったことはなかったし。


「でもダメ。朝海ちゃんがそうでも、直人さんがすきになっちゃったら悲しい」

「今日えっちするのに?」

「な、分かんないじゃんっ!」

「うまくいくといいね、ゆきみさん!」


朝海ちゃんが嬉しそうに笑ってくれたから私もニッコリ微笑んだ。

その後ろ、臣ちゃんが真っ青な顔して突っ立っている。

壁みたいにドーンって。


「なに、えっちって?え、なに?なんの話?」


早口でそう言われて苦笑い。


「ガールズトークに入ってこないで臣ちゃん!」


朝海ちゃんがシッシッて猫を追い払うように手首を動かすけど、目の据わった臣ちゃんは、私の隣にがっつり座ってきた。


「臣ちゃん隆二は?」

「知らねぇ。な、答えろよ?」

「答えない!」


口にチャックをして臣ちゃんに背を向ける。

だって話せることなんて何もない!

ごめんね、臣ちゃん。

私はどうしても直人さんが好きなの。

だから臣ちゃんの彼女にはなれません!

心の中で思いっきり叫んで机に伏せた。


「寝るなよ。胸触るよ」


ガバッと起き上がると、臣ちゃんは動揺している私の後頭部に腕をかけてそのまま勢いよくちゅ、ってキスをした。

え?なに?なにが起きた?

避ける暇も隙もないくらいスマートに挨拶かのように重なる唇に、動くことも避けることもできなかった。


「諦めねえって言ったろ」


臣ちゃんの低い声に頭の中がカァッと熱くなる。

朝海ちゃんが至って普通に「あ、タカノリ」視線の先に、タカノリと隆二、健ちゃん、いつものメンバーが集まった。

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