恋のキスキスキス(16 / 30)

んちゅ、って軽く触れる唇。

ギュッと直人さんの服の袖を掴むともう一度ゆっくりと、一度目よりも長く唇が重なる。

それでも数秒して離されて目が合った。

目尻に指を這わせた直人さんは耳元で「上書きされた?」って小さく聞いた。

だから私は「まだされない」って。

全然足りない、こんなんじゃ。

もっとちゃんとキスしてほしい、もっと深いキスしてほしい…

そんな願いを込めて直人さんを見つめると、「いけない子だなぁ、ゆきみちゃんは」頬を指が滑って首元に移動する。

距離がぐっと縮まって、月明かりの下、直人さんのキスが再び舞い降りた。


「ンッ…」


ハムって唇を甘噛みする直人さんの腕をギュッと掴む。

途端に直人さんの緩いキスが深くなる。

半開きの唇を舌で舐めてそのまま口内に舌を入れ込んだ。

直人さん、すき。すき。だいすき…

キスに言葉を乗せて直人さんに抱きつくと、背中に腕が回されて更に私を強く抱きしめる直人さん。

そのまま舌を濃厚に絡ませてさっきのタカノリとのキスを上書きしていく。

ディープキスの途中で「上書きされた?」なんて聞く直人さん。

だから舌を絡ませたまま「まだ」って言うと、クスリと笑った。


「たく。離したくなくなるぞ」


私をギューギュー抱きしめる直人さんの胸元に顔を埋める。

離さないで、このまま一緒にいて。


「部屋、あがってください…」


ついそんな言葉。

女の私から出ちゃった言葉にさすがの直人さんも半笑い。


「…行きたいのは山々だけど、今日はごめん。まだやること残ってて…。ゆきみちゃんが無事なの分かるまでは帰れねぇって思ってたから」

「忙しいのにごめんなさい」

「いーよ、けど次約束破ったら…キスだけじゃ済まされないから」


鼻の頭をチョコンと指で弾く。

胸の奥がキュンって鷲掴みにされて、ドクドク高鳴っている。

甘い直人さんの言葉に私はギュッと直人さんに抱きついた。

やっぱりまだ離れたくないよ、直人さん。


「直人さん…」

「んー?」

「すっ…」


きって言葉はキスで飲み込まれた。

もうここまできたら分かってると思うし、少なからず直人さんも私のこと恋愛対象として見てくれているんだって。

だけど確信的な言葉は大事で必要で。

臣ちゃんみたいにハッキリ言わなきゃ伝わらない。

さっきよりも激しいキスに身体持っていかれそうになるけど、ぐっと堪える。

今誰かに見られたら絶対無理!って思うけど、少しだけ私と直人さんのキスを止めることができなくて、この甘ったるい幸せの中に浸っていたんだ。

肝心なこと全て忘れたままで。

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