友達だって恋をする(13 / 30)

「これは?」

「………」

「じゃあこれ?」

「タカノリ待って、あのね、さっきから全部私じゃなくて朝海ちゃんっぽい。分かるよね?私黒より白の方が好きだよ…」

「え?そう?ゆきみも似合うって、黒。ほら着てみろよ?」


タカノリが選んだ服を持って無理やり試着室に押し込まれた。

無意識なのかなぁ、タカノリ。

絶対朝海ちゃんのこと、好きだよね、タカノリってさ。

あ、そっか!だから朝海ちゃんに対して見返りを求めているのか!

それに応えている朝海ちゃんも、=タカノリが好き?

私の脳内では恋の法則にぴったし当てはまった2人。


「哲也さん…」


高校の時からイケメン好きだった朝海ちゃんは、イケメンとしか付き合うこともなくて。

大学に入った途端一番派手なこのグループを全員虜にしたのも朝海ちゃんで。


「まだー?入るよ?」


いいって言ってないのにタカノリがガチャッと試着室を開ける。

当たり前に下着姿のままの私は思いっきり悲鳴をあげた。

タカノリはそんな私を見てケラケラ笑っていて。


「早く閉めてよ変態!」

「あ、お前ー!変態様に買ってもらう分際で、裸ぐらい見せとけ、減るもんじゃねぇし!」

「いーや!絶対いや!いいから早く閉めて!警察呼ぶよっ!」


ドアから顔を出して覗き込んでいるタカノリの赤い髪の毛をぐりぐり引っ張って外に出した。

はぁー。疲れる。

臣ちゃんと隆二の方がマシだった?

あの2人がいたらいたで、また女子からの視線が痛いからなぁ。

あ、こーいう時こそ健ちゃんだった。


「早くしろよ!あと10秒で開けるから!」


浸っている暇もなく、私は黒づくめの服を慌てて着込んだ。

フライング気味にタカノリがドアを開けると、マジマジと私を見つめる。

上から下まで舐めるように見ているタカノリは、「悪くない。とりあえずその格好キープな?」そう言うと、適当に白い服も選んでそのままレジに行った。


「これと彼女が着てる服全部ちょうだい。着て帰るから!」

「かしこまりました、岩田様、いつも御贔屓にありがとうございます」


ワオ、常連?

自分じゃ買えない値を貼っているこのお店、よく見ると朝海ちゃん御用達の服が沢山あった。


「ねぇタカノリ、朝海ちゃんのことすき?」

「は?なに今更?」


眉毛をピクリと下げて私を見つめるタカノリ。

ゴールドカードを持つ手首には高そうなROLEXの時計。


「私はバイト代から少しづつだけど返すから許してね」

「いらねぇよ、そんなの。ゆきみから金なんてとらねぇから安心しろよ」

「でも身体もあげられないよ、私…」

「…その考えも変えさせるから安心しろ」


ニッコリと余裕の笑みを浮かべるタカノリになにをされるのか終始ドキドキしていたなんて。

 / 

back