恋する人が連れてきたのは元カノ?(12 / 30)

「女?なにそれ?説明して?」


屈んで目線を私に合わせる隆二にそう言われてゴクリと生唾を飲み込んだ。

そんな爽やかな顔で怖いっ!!

優男隆二じゃないっ!


「直人、女連れて来てたらしい。彼女ではないらしいけど、女は泣いてて…」


答えられない私の代わりに臣ちゃんが言うけど…声を揃えてみんなが言うんだ。


「元カノだな、それ」


…元カノ。

確かに彼女ではないし、直人さんもわりとあやふやな言い方だったような?

舞い上がって記憶飛んでるのかも、私。


「元カノかよ…」


思わず呟くと隆二がぶはっと笑った。

ゆきみが毒づいたって。

今カノじゃなかったからって浮かれてたけど、

「やっぱり直人がいい…」とか言ってたかも。

サーっと血の気が引いていく。

え、なんで?そもそもなんで元カノと会ってんの?

普通別れたらもう会わなくない?


「顔怖なってんで?」


1人瞑想していると健ちゃんの甲高い声がして、ポンって頭を撫でられる。


「え?」

「デートん時聞いたらええよ」

「…聞けない。元カノだったら嫌だよ健ちゃん…」

「大丈夫や!俺がついとる!な?」


トンって胸を叩く健ちゃんに、「どっちの味方?」なんてタカノリが憎たらしく聞いた。

健ちゃんはキョトンとしたまま「ゆきみの味方に決まっとる」迷いなくそう言ってくれて嬉しかったけど、なんとなく朝海ちゃんの顔が濁って見えたなんて。

癒しの健ちゃんだからもしも朝海ちゃんが健ちゃんを頼りにしていたら一番に朝海ちゃんの味方でいて欲しいから。

だけど、臣ちゃんは勿論、隆二もタカノリもきっと私の味方じゃないよね。

直人さんの彼女になりたい私の味方なんかになってくれない。

タカノリの腕からビールを奪うとそれを一気飲みした。

うげ、くそ不味い!

なんでこんな苦いの飲んでるの、タカノリ!

平気な顔してジュースみたいにガバガバ飲んでるなんて有り得ない!

飲み込んだ瞬間吐き出したくなったけど頑張って我慢した。


「え、ゆきみさん?どうしたの?」


朝海ちゃんが目を大きく見開いて服を持つ手を止める。

そりゃいきなりビール一気飲みしたら誰でも驚くよね?

口端に垂れたビールを手の甲で男みたいに拭うと「飲みたい気分なの!」そう言ってニッコリ微笑んた。


「タカノリ、服買って!」

「いいけど」

「やった!」


喜ぶ私を見てタカノリが面白ろ可笑しく笑った。

その裏で、朝海ちゃんの抱えている闇が大きくなっているなんて気づくこともなく。


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