恋と友情(11 / 30)

「朝海ちゃん、服貸して!服っ!」


タカノリ邸にいるって言った朝海ちゃんに服を借りようと押しかけた。

相変わらずな広いタワーマンションの最上階に住んでるタカノリ。

ここに住んだら他で住めないだろうなーなんて思う。

土日で買いに行くべきか迷ったけど、無駄遣いはしたくないからって、朝海ちゃんを頼ってみる。

デートってなに着ればいいの?

高校生の時は制服だったし、それ以降彼氏はいない。

久しぶりのデートに私の脳内は浮かれあがっていた。


「まさか、直人に誘われたの?」


いつの間にかいつものメンバーが集まっていて、咥え煙草の隆二のサングラスがキラリと光っている。

目見えないし。

家飲み用に健ちゃんがお酒を大量に買い込んできていて、カードをタカノリに返していた。

やっぱりタカノリのカード使ったんだって。

また朝海ちゃんが身体で払うのかな…。

朝海ちゃんを見ると別になんてことないって顔をしている。

哲也さんのこと本気?それとも、タカノリ?

ジーッと見つめていたせいか、キョトンとした顔で朝海ちゃんが「ゆきみさん?なに?」私を見た。


「なんでもない、」

「朝海の服とかゆきみに激しく合わないって。俺が買ってやるよ」


見返りタカノリの言葉に慌てて首を横に振る。

健ちゃんの後ろにギュッと隠れて「間に合ってます」そう言うと、ブッて健ちゃんが吹き出した。


「あ?お前なー。買ってやるって言ってんのに素直に喜べよ、朝海みたいに!」


既に缶ビールを開けてゴクゴク飲み干すタカノリに苦笑い。


「朝海ちゃん、騙されてない?大丈夫?」

「騙されてるかもね、」


そう言ってニッコリ微笑む朝海ちゃん。

本音が見えない朝海ちゃんは高校生の時から変わり者って言われて人と距離を作っていた。

今だに私に対しても本音で接していないようにも見える。

それってなんだか切ないよな。


「タカノリ、朝海ちゃん泣かせたら許さないから!」


思わず意気込んでそう言ったら朝海ちゃんが嬉しそうに微笑んだ。


「これならゆきみさんも似合いそう!ほら見て!」


ターコイズのチュニック。

ちょっとボヘミアンでふわふわしていた。


「ホットパンツ禁止!生脚禁止!だっせぇ服着てけよ」


臣ちゃんがおツマミをキッチンで作成しながら茶々を入れる。

聞こえてたんだ、臣ちゃんてば。

勿論ながらずっと不貞腐れた顔の臣ちゃん。

居酒屋に呼びつけといて泣き喚いたものの、シフトアウトしたらケロッとしていた私を見て空笑いを零したんだ。

「お前が元気ならまぁいいよ」そう言ってくれて一緒にタカノリ邸にきたわけで。


「私ってば、臣ちゃんのこと振り回してるよね…」

「あはっ、自覚あり?ゆきみ」


隆二が笑って3本目の煙草に火をつけた。

革のレザーを脱ぐと白Tの下、上腕二頭筋がモリッとしていてちょっとドキッとする。

直人さんも、筋肉すごいよね。


「女に振り回されるのも嫌じゃないけど、ゆきみのこと独り占めしたいのは確か…。なぁ、やめろよ直人なんて…。女連れてくるような奴、やめろよ…」


臣ちゃんの言葉に隆二の視線が飛んでくる。

なにそれって顔で。


「女?」


眉毛をピクリとあげて私を見る隆二。

すごく優しい顔なのに、なぜか怖い。


「…臣ちゃんそれは」

「あ、二人っきりの秘密だった?ごめん」


まるで悪気のない臣ちゃんに苦笑いしかでないんだけど。


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