目覚めの朝3

―――ごめん、距離おきたい―――


それだけ告げて私の前からいなくなったアキラ。

三年も付き合って、そろそろ結婚だって思っていたのが私だけだったなんて、空しすぎる。

せめて理由をきかせてくれたらよかったのに、ってそう思っていた私の目に映ったのは、アキラが秘書の子と仲良く歩く姿。

私よりも五歳も若いその子を抱き寄せて、隠れてキスをしていたアキラ。

あんな場面を見たから…私の中で我慢していた気持ちの糸がプツっと切れて、一人でバーで飲んでいたんだ。

そこまでは覚えているけど…


「あの、私達…」


枕元にあった煙草を取って火をつけた社長は、艶やかに笑みを浮かべて…

自分が信じらんない。

まさかの、社長と寝るなんて…しかも記憶すらない。

これは…左遷されたらどうしよう?


「お前オレの秘書に移れよ?」

「はいっ?」


とんでもないことを言い出した。

左遷は困るけど、社長の秘書なんて持っての外…


「あの私秘書の経験もないですし…」

「黒沢と同じ部署で働きたいの?」


…どこまで知っているんだろう、この人は。

アキラと付き合っていることを隠していたわけではないけど、特に誰にも知られずにいた。

私かアキラが口を開かなきゃ誰にも伝わらないはずだから…
_5/33