幸せな結末9


「…社長」


「啓司」


「社長!」


「啓司だって」


「でも…」



背を向けているカレには見えまいけれど、私と対面にいるのは、紛れもなくアキラ。


すっごい顔でこっちに歩いてくる。



「どういうこだよ? お前オレのもんだろが!」



そう言って私の腕を掴もうとするアキラの腕から、スッと離された。


私を背に隠す啓司は、得意気な顔でアキラに視線を送る。




「お前勘違いしてんじゃねぇぞ? ユヅキはオレの女だ。来月結婚すんのオレ達」


「は、何言ってるんすか、社長! 変な冗談勘弁して下さいよ」


「お前こそ、冗談は顔だけにしろ! ユヅキ、ちゃんと言ってやれ?」



うわ、ここで私にふる?


…絶対ふるって思っていたけど…。


でもこうやって私が前に出れるのは、ちゃんと啓司が守ってくれるって信じているから。



「アキラ、ごめんなさい。別れて欲しい…私、啓司さんのこと、好きになった。だから結婚できない…」


「は、お前ふざけんなよ!」



こっちに向かってくるアキラをポーンっと突き飛ばす啓司は、「悪いな、黒沢!」そう笑って私を直通エレベーターへと押し込んだ。


扉が閉まると「アハハハハ」って思わず笑いが零れた。




「ありがとう、啓司」


「なにが?」


「うん。私を見つけてくれて」


「当たり前」


「…ちゃんと言ってないよね?」


「あ?」


「あなたを愛してる」


「………」




ボッて耳まで真っ赤になって…――――


照れ隠しみたいに、私の髪をスッと撫でる啓司に、甘いキスを贈った。



すぐそこにあった幸せに、今気づいたよ…―――




*end*
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