本当に子供みたいなエリちゃん。
私はこんな子に怯えていたんだと思うと、ちょっとだけ可笑しかった。
誰でも恋をしたら盲目になってしまうもの。
けれど、自分の気持ちを見失わなければ、いつだって正直でいられるんだと、啓司が教えてくれた。
ちょっと強引なやり方だったけれど、私はもう啓司以外の人と関係は持てないだろうって…。
そういう身体にされるなんて。
「あ、エリちゃん!」
「なんですかっ!?」
「私結婚するの…社長と! アキラを宜しくね?」
「は、…」
「じゃあね〜」
別にエリちゃんに意地悪したいわけじゃないけど、これぐらい許されるんじゃないかって。
少なくとも、私からアキラを奪ったのはあの子。
きっと、アキラが悪いって分かっているけど、これは私なりのプライド。
やられっぱなしなんて、性に合わないわ!!
「おい」
「え?」
女子トイレの前の壁に背中を預けてダルそうなカレ、こんな所にいるなんてちょっと吃驚した。
「どうしました?」
「離れるなって言ったろ」
「…トイレですけど」
「分ぁーってる! けどオレに言ってから行けよ。社内だし、黒沢に会われても困る! もうオレのもんだしお前」
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