「え、待って! ハワイって…」
「お前オレと結婚する気はある?」
「それは、あります…社長がいいなら」
「啓司」
「…啓司さんがいいなら」
「いいよ」
「でも、ハワイって…それに仕事は?」
「ハワイで二人きりで挙げようか」
「…あの」
いきなりすぎて頭が混乱する。
「黒沢プランには負けたくねぇ。まぁ、負ける気もしねーけど」
とんだヤキモチが返ってきて、少し緩む感情。
まさかのアキラに対抗していたと思うと、嬉しくなる。
「オレの独占欲を舐めんなよ」
「そんなこと…」
「オレ以外の男と二人っきりになるんじゃねぇぞ」
「はい」
「仕事は、続けたいなら続けて構わねぇけど、オレの秘書以外はやらせない」
「うん」
「じゃいつ結婚する?」
「もう!」
「気、短けーの。これでも十分待った」
聞きなれないその言葉に、私は一瞬だけ身体が固まった。
そもそもどうしてこの人は私を選んだんだろうか?
確かにあの日、アキラの浮気が発覚して、一人でヤケ酒を浴びていたけれど、偶然居合わせたカレはあの日私を好きになったなんてこと、有り得ない。
「社…啓司さん…」
「ん?」
「いつから私を?」
「あぁ、言ってねぇか?」
「何も聞いてません」
「そうだっけ? あ、着いた。中で話す、行くぞ」
ホテルの裏口に止まったタクシーから降りると、しっかりと私の手を引いて、中に入っていく。
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