「一ノ瀬〜?」
聞こえた社長の声に、顔が自然と緩んでいく。
今度は私がアキラを捨てる番。
「はい!」
会議室のドアを開けた瞬間、目の前に社長の胸元で…
「お前、ほんとすぐいなくなんなぁ、たく。ほら来いよ」
まるでアキラの姿が見えていないかのよう、まるでそこに誰もいないかのよう、私の手首を握って歩きだす。
そのままちょっとだけ歩くと、その手を指に絡めて、更に私を引き寄せた。
耳元に顔を寄せて囁く言葉は、甘い言葉…―――
「だから言ったろ!オレのがいい男って分からせてやるって…」
トクンと胸が跳ね上がった。
一度聞いたその言葉、それは最初の夜、アキラの浮気現場を発見した私が酔い潰れてしまった時に、愚痴愚痴社長に弱音を吐いた時にくれた、オレ様な言葉。
こんなオレ様に惚れてなるもんかって、意識が薄れながらも思ったんだった。
「うん、そうかも…」
耳元で囁き返した私に、隣の社長がクッて喉を鳴らして笑った。
グイって腰に腕を回したカレは、得意のエレベーターを呼ぶと、そのままその箱の中に私を連れ込んだ。
アキラがこっちを見ていた気がするけれど、私を壁に追い込んでキスを迫る社長の首に腕を回すことを止めなかった。
ザマーミロだ!!
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