会社に行くなり、私とアキラの噂が広まっていた。
たぶんだけれど、アキラ本人が流したんだって。
私を絶対に渡さないつもり?
そうやって縛り付けて、自分は浮気をするんでしょう?
昨日の田崎くんとの会話を聞いていなかったなら、間違いなく私はこの噂を受け入れて幸せ絶頂だったかもしれない。
そんな偽りの幸せ。
早く気づいてよかったって思えばいいんだろうか。
あれ程までに、好きだと思っていたアキラ。
今アキラを見ても、私の感情が高ぶるどころか、冷ややかなものが胸の中を渦巻いているんだ。
アキラに対して、こんな感情を持つなんて思いもしなかった。
「ユヅキ、ちょっと」
グイっと腕を引き寄せられて、アキラが私を昨日の会議室に連れて行く。
「早いとこ上司に報告しとかないと、まずいだろ!なんか噂が先回りしてて…」
「………」
「そしたら式場も探さないとだし、今夜そっち行っていいか?」
「ごめん、私今日から出張行かないといけなくて…」
あからさまに不機嫌になるのは、社長の同行だから。
社長と出張予定の私は、今日は午前中で帰って、社長と私の分の出張用意をして、午後から飛ぶ予定だった。
あえてそれをアキラに言わなかったのは、ささやかながら、私なりの反抗なのかもしれない。
遠まわしに「あなたに言う必要なんてないわ」って言いたかったのかもしれない。
当然ながら内緒にされていたアキラはムスっとして…
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