逆転3
会社に行くなり、私とアキラの噂が広まっていた。

たぶんだけれど、アキラ本人が流したんだって。

私を絶対に渡さないつもり?

そうやって縛り付けて、自分は浮気をするんでしょう?

昨日の田崎くんとの会話を聞いていなかったなら、間違いなく私はこの噂を受け入れて幸せ絶頂だったかもしれない。

そんな偽りの幸せ。

早く気づいてよかったって思えばいいんだろうか。

あれ程までに、好きだと思っていたアキラ。

今アキラを見ても、私の感情が高ぶるどころか、冷ややかなものが胸の中を渦巻いているんだ。

アキラに対して、こんな感情を持つなんて思いもしなかった。


「ユヅキ、ちょっと」


グイっと腕を引き寄せられて、アキラが私を昨日の会議室に連れて行く。


「早いとこ上司に報告しとかないと、まずいだろ!なんか噂が先回りしてて…」

「………」

「そしたら式場も探さないとだし、今夜そっち行っていいか?」

「ごめん、私今日から出張行かないといけなくて…」


あからさまに不機嫌になるのは、社長の同行だから。

社長と出張予定の私は、今日は午前中で帰って、社長と私の分の出張用意をして、午後から飛ぶ予定だった。

あえてそれをアキラに言わなかったのは、ささやかながら、私なりの反抗なのかもしれない。

遠まわしに「あなたに言う必要なんてないわ」って言いたかったのかもしれない。

当然ながら内緒にされていたアキラはムスっとして…
_22/33