「ユヅキちゃんにプロポーズしたのかよ?」
「まぁ」
聞こえた声はアキラと同僚の田崎くん。
喫煙ルームでこっちには気づいていない様子だった。
「なんでよ? 別れるって言ってたよね? エリちゃんどーすんのよ?」
「…あの社長が目かけてる女だろ。勿体無いじゃん、ここで終わらせたら…。エリはまぁ何とかする…あいつ感度よくなってて、なんかショックだった…」
「お前そのうち刺されんぞ?」
「はは、かもな」
…同じ男に二度も騙されるなんて、バカみたい。
社長に抱かれた罪悪感で、エリちゃんとのこと、なかったことにしようって。
見てない、聞いてない、知らなかったことに…
今度こそ、私との将来を選んでくれたんだって、アキラを信じた私がバカだったんだって…。
ポンポンって私の頭を軽く叩くと、社長は何も言わずに又私の手を引いて社長室に戻った。
「オレの前では無理も我慢もいらねぇよ…。お前の弱いところも、ダメなところも最初の夜に全部見せてもらった」
あんなにエロ社長だと思っていたのに、今は今は…この長くて綺麗な手に縋り付くしかできなくて…
久しぶりに人前で涙が流せたんだ…。
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