会議室の情事9
「ユヅキちゃんにプロポーズしたのかよ?」

「まぁ」


聞こえた声はアキラと同僚の田崎くん。

喫煙ルームでこっちには気づいていない様子だった。


「なんでよ? 別れるって言ってたよね? エリちゃんどーすんのよ?」

「…あの社長が目かけてる女だろ。勿体無いじゃん、ここで終わらせたら…。エリはまぁ何とかする…あいつ感度よくなってて、なんかショックだった…」

「お前そのうち刺されんぞ?」

「はは、かもな」


…同じ男に二度も騙されるなんて、バカみたい。

社長に抱かれた罪悪感で、エリちゃんとのこと、なかったことにしようって。

見てない、聞いてない、知らなかったことに…

今度こそ、私との将来を選んでくれたんだって、アキラを信じた私がバカだったんだって…。

ポンポンって私の頭を軽く叩くと、社長は何も言わずに又私の手を引いて社長室に戻った。


「オレの前では無理も我慢もいらねぇよ…。お前の弱いところも、ダメなところも最初の夜に全部見せてもらった」


あんなにエロ社長だと思っていたのに、今は今は…この長くて綺麗な手に縋り付くしかできなくて…

久しぶりに人前で涙が流せたんだ…。
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