プロポーズ2
「結婚しようか」


まさかのプロポーズが飛んでくるとは思わなくて…


「え…」

「いや? ずっと一生側にいてくれない?」

「…私でいいの?」

「お前がいいんだ」


「嬉しい」…そう言おうとした瞬間だった。


「一ノ瀬」


何となく怒ったような低い声がして、私の視線はそっちに向けられる。


「社長…」

「仕事だ、付き合え」

「あっ、はいっ!アキラごめんまた後で」


煮え切らないようなアキラの顔に気づくわけもなく、私が社長の元に駆け寄ると、長い腕が伸びてきて、私の手首をガッチリ掴んだ。

別に腕を握る必要はないはずなのに…。


「あの、社長!」

「なんだよ?」

「腕、離してもらえませんか?」

「嫌だっつーの」


はい?

今なんつった?!

驚いた顔を見せる私に、振り返った社長は再度声を上げて「嫌だよ」って答える。

なに子供みたいなこと言ってんの、こいつ!


「あの、子供じゃないんですから」


呆れたような私の口調に、社長は苛々しているのか、「ちょっと、黙っとけ」って一言。

勿論その腕は私の手首を掴んだままで…――――――

長い廊下を歩ききって、角を曲がった場所にあるエレベーターホールにある社長室直通の左にあるエレベーターのボタンを押すと、ポーンとこもった音がして、すぐに社長の手で中に押し込まれた。
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