TOKYO3
こっちに向って大きく手を振っている丸が目に入った。
その横に美容師みたいでお洒落に赤いネルシャツを腰に巻きつけたザ東京!って顔の男の人がいて…
「ゆきみさん、逢いたかった〜!」
ガバリと丸に抱きしめられた。
「ちょっと――!離れてよ、丸ちゃん!!」
美月が私と丸を剥がしているのが可笑しいけど、私を見てニッコリ微笑むソイツ…
「いやだって、村さんおるとできひんから。ゆきみさん抱き心地ええって不細工な顔で言いふらしよってんで、あのおっさん。ほんま腹たつでしょ?」
「あ、直人さん」
登坂くんの声に美月もそっちを向いた。
「どうも…」
ペコっと笑顔で軽く頭を下げたナオトサン。
「あの…あ、もしかして私の家探してくれてる人?」
「あ、そうそう自分が探してます」
「わーありがとうございます!本当にすみません、何も知らなくて私。てことは、丸の同期?」
「はい、自分片岡です、片岡直人…」
ニッコリ八重歯を見せて微笑むその顔に、何でかドキンとした。
「直ちゃんは俺の同期でめっちゃええ奴やねん!こっちで分からんことあったらなんでも直ちゃんに聞きや!優しく教えてくれんで?手とり足とり腰とり…な?」
エロ目全開の丸をパコンと後ろから軽く叩くと、直ちゃんが軽く笑った。
「まぁ望むなら?」
なるほど、ノリはいいのね!
そーいうの嫌いじゃないよ。
「じゃあお願いしよっかなぁ!直ちゃんに!」
腰にふわりと腕を回して至近距離でそう言うと、直ちゃんが照れくさそうに笑った。
その笑顔が可愛くてキュンと胸が疼く。
「ちょっとー。直人さんゆきみさんに手出さないでください!なんならあたしが探します、ゆきみさんの東京のオトコ!」
美月が腕を組む私と直ちゃんを割って入ると「東京のオトコ?」直ちゃんの目が見開いた。
「ゆきみさん、大阪に村上って男置いてきてるんで。…でも無理ですよ遠距離なんて…絶対続かない…」
ボソッと呟いた美月の声は思いの外低くて。
説得力があるのは、美月ときみくんの別れを知っているからだろうか?
ほんの一瞬登坂くんの顔が美月を見たけど、すぐに目は逸らされた。