寂しい人3



「どしたん?元気ないな」


ポスっと頭を撫でられて顔をあげると章ちゃん。

今は一番会いたくない人、なんて言えないけど。

弱ってることを諭されたら章ちゃんのペースに持ち込まれちゃう気がして私は「絶賛二日酔い中…」小さく苦笑い。


「まぁあんだけ飲めばなぁ。直人になんもされんかった?」

「へ?直ちゃん?別になにも」

「そりゃよかったわ。ゆきみちゃん遠距離やからさ、狙ってる奴仰山おんで?気ぃつけや?」

「みんな物好きだよね。遊びたいだけでしょ、」


結婚を視野に入れる付き合いというよりかは、身体だけ楽しみたい…

そんな風に聞こえた章ちゃんの言葉。


「ヤス、その辺にしとき。ゆきみちょっとこい!」


きみくんが眉間にシワを寄せて私を呼んだ。

資料を手にしているきみくんはそれを私に見せて「この店どーなっとる?落とせないんやったら他の店探さなあかんし、」…やば、仕事に支障が出るなんて最悪だ。

唇を噛み締めて「ごめんなさい、必ず落とします」そう言うと、ポスっと頭に手が乗っかる。


「俺も一緒に行く。別に無理せんでええよ、今更。俺には甘えられるやろ?」

「きみ、くん?」

「昨日は悪かったな、マルに押し付けて…」

「そんなに優しくしなくていいのに」

「別に優しくないやろ、こんくらい、大勢おるわ」


だけど。

私ときみくんと一緒にフロアを出ると美月と臣くんがいて、美月がこっちにかけてきた。


「ゆきみさん、昨日大丈夫でした?」

「うん、大丈夫!二日酔い酷いけど…」

「お前は、大丈夫やった?」


美月に優しく声をかけるきみくんに、ほんのり複雑な表情を見せる美月。

でも分かる。美月がちょっと嬉しさを噛みしめている顔ぐらい。


「うん、ぜーんぜん!」


ほら、嬉しそう。

リスみたいに歯を見せて笑う美月にきみくんも微笑み返した。

懐かしい様な寂しいような…

辛く悲しい別れも、時が経てば前向きなものに変わるのかと思うと、私はどこまで頑張ればいいのか分からなくなる。

そもそも恋愛とは頑張るもの、なのだろうか…

頑張らないと続かないもの、なのだろうか…

信ちゃん教えてよ。



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