悲しい本音2



「エリちゃんとこ泊まるぅー!いやぁ、離れないぃっ!」



お開きかな?っててっちゃんが言ったけど、景気付けにって丸ちゃんと直人さんが一気飲みをしたらみんなヒートアップして、ゆきみさんはものの見事に酔っ払った。

お気に入りだっていうエリーにひっついてずーっと離れない。

あたしの話をきっと聞いていたであろうきみくんは、こんな時一番にゆきみさんのお世話をする人なのに今更手も出さずにてっちゃんとまだ飲んでいる。

だからって訳じゃないけど直人さんがエリーに引っ付くゆきみさんを剥がそうと格闘している。

直人さん、絶対ゆきみさんのこと好きだよなぁ。

分かりやすいなぁ。

村上さんはゆきみさんをこんなに酔わせて一体何やってんだか。

寂しい気持ちにさせて、酒で紛らわせるまでさせる村上さんに憎悪すら生まれそうで。

やっぱりどんなでもあたしにとってのゆきみさんは大事な人だから、誰より幸せでいて欲しいんだ。



「わかった、わかったー。ゆきみさんじゃあ俺と一緒にエリーのとこ泊まろ?」



岩田の言葉にピタっと止まったゆきみさんは、次の瞬間ニッコリ微笑んで「うんっ!」満面の笑みを浮かべた。

それを見ていた直人さんは、そんなゆきみさんの笑顔に、見とれたように突っ立っていて。

岩田が直人さんの手を取ると自分のポジションとスッとチェンジする。

慌てて直人さんがゆきみさんを抱き抱えて…



「んーなんかいい匂い。やっぱイケメンは違うねぇ」



完全に直人さんを岩田だと思ったままのゆきみさんに、ちょっと照れながらもほんのり切なさをその顔に浮かべる直人さん。




「あの人の東京の男、直人さんでいんじゃねぇ?」



臣くんが一連のやりとりを見てそう言った。



「まだダメだよ、村上さんより好きにしないと…。まだ村上さんがゆきみさんの中から消えてないもん」

「まぁそんな簡単に消えるもんじゃねぇだろ。別れたわけでもないし」

「うん。1人で泣かせないゆきみさんだけは」

「お前みたいにな!」



ポスって臣くんの温もりが落ちる。

コクっと頷くと臣くんが優しく髪を撫でてくれる。

酔ってるゆきみさんを直人さんと、直人さんのとこに転がりこんでる丸ちゃんに任せてあたし達は解散した。



「一本だけいい?」



そう言って喫煙スペースに小走りで行く臣くんを見つめていたら、いなくなったと思ったきみくんが何故か戻ってきて。



「悪かったな」



あたしにそう言った。



「え?」

「…お前が幸せならそれでええ。今度は失敗すなよ」



ポンポンってきみくんの手があたしの頭を優しく撫でた。

大好きで大好きで、大好きすぎて逃げたあたしのきみくん。



「再会なんて、したくなかった」



二言だけ言って去りゆくきみくんの後ろ姿にポツンと小さく呟いたあたしの心は、自分でも驚く程、大きく脈打っていたなんて――――




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