遠距離の難しさ4
「お帰り!寒かったでしょ?」
出迎えてくれたのは直ちゃんだった。
さっきの今でなんとなく気まずくて。
勝手に私だけが気まずいだけなんだけど。
「だ、大丈夫」
直ちゃんから目を逸らしてリビングに行くとテレビゲームできみくんと臣くんが本気で対決してるのが目に入った。
それを複雑な目で見つめている美月。
「美月」
「ゆきみさんおかえりー」
「なにこいつら?」
「分かんない。勝手にヒートアップしてる」
「子供だよねぇ二人共!温かい珈琲飲む?」
土田班の哲也くんが私と美月を呼んでそう言った。
「飲む飲む!」
やっぱりどー見ても哲也くんイケメンだなぁ。
「哲也くん彼女いないの?」
急にそう口に出した私を一瞬キョトンとしたものの口端を緩めて微笑んだ。
「やっと俺に興味持った?」
「え、」
「ゆきみちゃんも美月も、愛されキャラだよねぇ。ここにいる奴らみーんな2人のこと大好きって。あ、俺もね!」
美月と目を合わせてなんか照れる。
へへへって2人で笑うと「可愛いね、二人共」なんてお世辞をくれる。
「てっちゃん誤魔化した?彼女いるか?答えてないよー」
美月が唇尖らせてムゥっとするとポンって美月の頭を優しく撫でる。
「いないよ、俺の彼女になってくれる?」
「えっ!?なりたい!」
ぴょんぴょん跳ねる美月だけど、こんなの臣くんが聞いたら物凄い剣幕で連れて帰るだろうなーって。
あいにくマリオカートに夢中だから微塵も気づいてはいないみたいだけど。
「じゃあ登坂と別れる?」
「…それは、無理ー」
「じゃあダメでしょ!」
ペシって痛くないしっぺが美月のオデコにヒットした。
余裕だなー哲也くん。
そーいうとこかっこいい。
「ゆきみちゃんは?なる?」
「私は…一応信ちゃんがいるから…」
「一応なの?」
クスッて笑う哲也くんに胸がドキリとする。
「うん、一応。だって信ちゃんたらなかなか逢いに来てくれない。結構寂しいよ私…」
「だから遠距離は無理だって、ゆきみさん」
「ねぇ美月。ずっと1人で苦しんでたよね?きみくんと離れちゃった時。ごめんね私、何も気づいてあげられなくて。美月が言ってくるの待ってたなんてただの言い訳。私がどんなことしてでも聞くべきだった。今更かもしれないけど、むし返すみたいでムカつくかもしれないけど、話してほしいの、きみくんとのこと…」
私の言葉に美月は顔を伏せていて。
それから小さくコクリと頷いたんだ。