▼ Destiny3



「ほんまに樹里亜は言い出したらきかへんねや」



何故か浴衣を着ている健ちゃん。

カラカラと下駄を鳴らして仲良く歩く私達。

反対側にはじんべえ姿のELLY。

こちらもsevenの幹部で、特攻隊長を誇るsevenの隠し玉って言われる存在の人。

ツーブロックの上だけ金髪にして、ケープでガッチガチに固めているELLYは、ハーフでまぁ目立つ。

元から紳士な血が入っているせいか、女からの人気が半端なかった。



「健ちゃんアイス奢って?」

「お前、話し流すな?たく。ええよ、どれ?」

「えっと、あ……―――――」




かき氷屋さんの手前、神社に入る所に溜まっていた若者達の中心にオミさんがいた。

私の視線を追うように健ちゃんとELLYがそっちに目を向けると、小さな舌打ちが届く。

え?なに?




「最悪や。樹里亜、ここは場が悪い。場所変えんで」



ドクン、ドクン、と胸を打つ心臓の音。

まさかだよね、まさか。

まさか違うよね……




「待って健ちゃん、なんで?あの人達、だれ?」

「雷翔の幹部や。頭は一際でかい直己。その隣の金髪はGUN。通称コブラ。得意技はプロレスのコブラツイストや。アッシュの髭が隆二。元々ボクサー目指してたぐらいやからアイツのパンチはヤバイ。それから黒髪が登坂。あいつのキックの威力も相当のもんや。直己を取り巻くあの3人半端ないねん、正直俺でも勝てるか分からへん…」



……雷翔なんだ、オミさん。

うちの兄貴達と敵対している、雷翔の幹部…

私が見つめる先、囲まれている中心にいるっていうのに、オミさんと目が合った。


その瞬間、「ちょっとどいて!」オミさんが人をかき分けてこっちに来る。




「見っけた!俺の天使!」



そう言ったのも束の間、私の両隣にいる健ちゃんとELLYを見て一瞬で目つきを変えた。

鋭い、刺すような目つき。

それにすらドキッとしてしまうっていうのに。




「山下とELLY…。あんた、そっち側?」



静かに聞かれて。



「……あなたは、雷翔?」



話しかけた私に吃驚して健ちゃんが不振にオミさんを見た。

すぐに視線は私に戻って…



「どーいうことや?樹里亜、登坂のこと知ってるんか?」



健ちゃんの「樹里亜」に、オミさんは瞬きを繰り返す。



「嘘だろ、樹里亜って……あんた哲也の妹?」

「土田樹里亜。兄貴は哲也と直人…。あなたは?」

「登坂広臣…雷翔だよ…」



悲しい声だった。

せっかくまた逢えたのに、こんなのってない。

どうしたらいいか分からない。

オミさんに惹かれてしまう心とは裏腹に、兄貴やいつでも傍で守ってくれてる健ちゃん達を裏切ることなんてできない。

それは私だけじゃなくオミさんも同じなのか、一歩も近づいてはこない。



「臣?」

「あ、直己さん、なんでもないっす…」




頭って言われてた直己が健ちゃんとELLYを見ている。




「行くで樹里亜。もうここには二度とこおへんよ」



健ちゃんに腕を掴まれて引き寄せられる。

雷翔が私達sevenを見つけて囲む勢いで威嚇しているのが分かった。




「オミさんっ!」

「樹里亜……」

「オミさっ!!」



オミさんの方に向かっていこうとする私を無理やり健ちゃんとELLYが捕まえてこの場から連れ去った。

だけどオミさんはやっぱり追いかけてなんてきてくれなくて、私の初恋は終わったんだって。

恋になりかけていたこの小さな恋。

それでもこんなにも胸が痛い。

こんなにも、苦しい。


ああ、神様は意地悪だ。

どうして東と南と分けてしまったの?

こんな争い、無駄だよ。




とてもじゃないけど帰る気になんてならなくて、私は「教会で懺悔してくる」そう言って一人出て行った。


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