▼ 裏切り行為3
このどこに広臣がいるんだろうか?
健ちゃんと私を見て、雷翔のメンバーがいきり立っているのが分かる。
広臣、どこにいるの?
「あ、あそこや」
一際大きなバイクが連なっている倉庫のドアは半開きで、そこを健ちゃんが足で開けると中には広臣がいた。
「こんにちは」
そう言ったのは頭の直己。黒い髪をガッチガチにリーゼントにしていて、葉巻のようなものを咥えている。
「臣、どういうこと?」
低い声を出したのは直人にぶん殴られていた隆二。
と、金髪コブラ。めちゃくちゃこっちを睨んでいる。
でも。
「サエさんとアンズさん?なんで…」
哲也とよく一緒にいる二人だった。
哲也がどこで何をしているのかは知らないけど、わりとよくこの二人と一緒にいる姿は見ている。
別に付き合っているとかそういうことじゃなくて…
私を見て気まずそうな顔をしたものの、それを逆手に取るように隆二とコブラが二人を引き寄せたんだ。
「やめてよ、触らないでよ!二人とも、哲也のものだよ!」
「樹里亜、やめろって」
健ちゃんがそう言って私を後ろから抑える。
「なんでこんなところにいるの?てっちゃんは知ってるの?」
「煩いな〜。自分だって雷翔に手だしてんじゃん。別にあたしらが誰とどこにいようと勝手でしょ?言っとくけど、あたし達にとっては哲也も雷翔の男も、変わらないただの男だから!」
冗談でしょ、意味わかんない。
「おい、舐めた口聞いてんじゃねぇぞ、俺の女に」
広臣がド低い声でそう言ってくれたけど、最愛の兄を第三者に侮辱されることがこんなにも悔しいだなんて思わなかった。
今まで傍にいすぎて、気づけなかったのかもしれない。
悔しい…
仲良くなろうとも思っていたのに、そっちのやり方とそれに乗っかる女に心底腹が立った。
「広臣…私はやっぱりsevenの女なのかもしれない」
「え?樹里亜?」
「…ごめんなさいっ」
「樹里亜、お前っ!!!」
健ちゃんの腕を引いてその場を飛び出した。
目の前に広がっていたのはそう…―――「大事な妹返して貰うぞ!」バイクに跨った哲也と直人と、他のみんなも。
凶器の目で直人がバイクから飛び降りて雷翔のアジトに向かって一直線に走り去る。
止めようとした雷翔メンバーを物ともせず、飛び蹴りで吹っ飛んでいくと、中にいたコブラの金髪を掴んで出てきた。
ぼっこぼこに殴りつける直人に、加算するようにゆっくりと哲也がそっちに向かう。
そこに立ちはだかるのは直己じゃなくて、広臣。
「メンバーには手出すな!」
大声で怒鳴ると、広臣が哲也に向かって走ってきたんだ。
もう後には引けない。
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