▼ 裏切り行為2



「全く樹里亜って奴はさすがはあの兄貴らの妹やねんなぁ…」

「…え?」

「どないするつもりや?」

「わかんないよ、健ちゃん。健ちゃんまで私から離れるみたいですごい寂しかったよ。どこにもいかないよね?傍にいてくれるよね?」


外ベンチの上に寝そべっている健ちゃんの腕を掴んでそう言うと、ほんのり口端を緩めた。

目を閉じたまま「大丈夫や」って言う健ちゃんの声をしっかりと心に刻む。

やっぱりいざって時にいつだって傍にいてくれた健ちゃんの存在は私の中でも大きい。

だから本当は健ちゃんが嫌がることはしたくないし、私のせいで健ちゃんに被害が及ぶことも避けたい。

でも…


「ごめんね、健ちゃん。広臣のこと好きになって」


こんなこと言いたくない。

でも健ちゃんを守りたい私の気持ちが伝わればいいなって思うわけで。

だからか、そんなことを言った私に健ちゃんがパチリと目を開けた。

柔らかく微笑んで私の頬に手を添える。


「悲しいこと言わんでええ。俺ん前では自分の気持ちに嘘なんてつかんでええよ。安心しぃ。どんなことが起きても、何があっても俺が守ってやんで」


泣きそうになった。

周りを巻き込まなきゃならない自分の恋愛に。

でもそれでもどうしても諦められない。

広臣との未来を夢見ていたいよ。

小さく頷くと、健ちゃんが時計を見て起き上がった。


「そろそろ10分たつな。樹里亜、中入んで」

「…うん」


健ちゃんに腕を引かれてゆっくりと倉庫街へと入っていく。


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