▼ 裏切り行為1
「なんか…刑事みたい」
「楽しんでる?」
「なんかもう、ここまで来たら色々楽しまなきゃって思ってるのかもしれない」
「…まぁそうだな。そういうとこ、好きだわ」
広臣の手がクシャっと私の前髪に触れてそのままオデコに小さくキスを落とした。
先頭を歩く健ちゃんは抜き足差し足忍び足でコソコソついていってる。この先に一体何が待っているのか…。
たどり着いたのは「アジトだ。マジでそこまで連れてきてんのかよ、あいつら」広臣の声がほんの少し上ずってる。
この辺は当たり前に来たことのない私。そもそもsevenの女がこんなとこにのこのこついてくるなんて、どうにでもしてください!って言ってるようなもんだって。
だから雷翔の敷地内には一度も入ったことがなくて。
前を歩く健ちゃんは警戒しつつも迷いなんてないから、きっと今まで入ったこともあるんだろうな〜なんて思えた。
どうにか共存できないんだろうか。
私と広臣の愛で…
「おい登坂、お前行ってきいや。俺と樹里亜はここで待っとる」
健ちゃんの言葉に広臣の私を握る手に力が込められた。
そのままぎゅうって抱きしめられて。
「健二郎、信用できる?」
私に聞いた。だからコクって頷くと盛大に溜息をつく。
「分かった。様子見てくる。けど10分して戻らなかったら樹里亜もきて欲しい。10分で話つけてくるから」
「10分ね、分かりました」
「樹里亜…」
「ん…」
広臣のキスは甘くて情熱的で心がギュって痛い。
名残惜しく私を離すと、目つきを変えて歩き出した。
別に永遠の別れなんてことじゃないのに、一秒も離れたくない…なんて思っている自分がいたなんて。
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