▼ 闘い前の一時3



「いっそこのまま駆け落ちしちゃう?」




ベッドの上、上半身裸の広臣が煙草を吸いながら私に言った。

煙草の匂いは兄貴達や健ちゃんで慣れている。




「駆け落ち?」

「そう。愛しあってる二人が誰にも知らない所でひっそり暮らす…」

「ひっそり暮らせる?」

「…無理だな。お前俺のこと分かってきたじゃん?」




ポンポンって頭を撫でられる。

それが心地よくて目を閉じると、煙草を灰皿に押し潰した広臣が私の上にダイブしてきた。

そのまま息をつく暇もない激しいキス―――




「樹里亜舌出してっ…」




荒く呼吸をしながら広臣の甘くて低い声に口を開けて舌を出した。

そこにジュルっと絡まる舌。

今ほど終わったばかりの行為。

でも足りない―――どんなに抱かれても足りない気がした。

首筋を舌でなぞりあげられて顎をチュルリと吸われる…

手は私の胸の突起を器用に撫でていて、反対側は太腿を軽くなぞっている。

そのままけん盤を弾くように太腿から移動した先、ズンっと簡単に広臣の指が入り込んだ。

親指で手前の突起を擦られてビクンっと身体が反応する。




「ハアアッ…」




口から漏れた甘い吐息に広臣が妖艶に微笑んだ。

私を組み敷いて胸元を吸いながら降りてくる。

何もかもが初めての私が痛くないようにって、物凄い時間をかけて色々してくれるからほどよく気持ちがいい…気がする。

肌を重ね合わせるだけで、温もりを直で感じるだけで、愛まで感じるなんて知らなかった。

広臣が指を動かすと聞こえる水音に、キュっと子宮が閉まったような感覚で。




「イク?」

「…―――ッは…」




頭の中が真っ白になった。

むず痒いそこに、次の瞬間入り込んだのは広臣の舌。




「アアアアアアッ…」




なんともいえない声があがってヒクヒク身体をクネらせた。

それでもガッチリと開いた足を広臣の腕に固定されてそこに顔を埋める広臣は何度も私を昇天させたんだ。






「大丈夫?」

「…だめ」

「ごめん、樹里亜可愛いから我慢できなくて…もうしないよ。今日はこのまま抱きしめててあげる」

「広臣は気持ち良かった?」

「当たり前だろ、何も心配すんな。兄貴達のことも、チームのことも俺に任せてろよ。樹里亜は傍にいてくれればいい…」

「…はい」




分厚い広臣の胸に顔を埋めると、疲れたのか一気に眠気が襲ってきた。

間もなく戦いが始まるなんて知るはずもなく、私達はただこの時に身を委ねていたんだ。



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