▼ 彼の本気3
「オミさんっ!?」
両腕両足を縛られてベッドに張り付けられているオミさんの姿に涙がブワっと溢れた。
「酷いっ!なんてことするのよっ!最低、馬鹿兄貴!!」
直人が止めるのも聞かずに私はオミさんの所まで駆け寄った。
後ろから直人だか哲也だかが私を剥がそうとするけど思いっきり身体を振って拒否した。
「あーあ、見つかっちゃった」
そう言った哲也は私の頭にポンっと手を乗せると「これで雷翔も逃げらんなくなったね」ニコリと微笑む哲也に寒気がした。
口端を緩めているもののその目は全く笑ってなくて、我が兄貴ながら血の気が引く思いだった。
だけどオミさんはそんな兄貴達に全く怯むこともなく。
「認めてください、俺と樹里亜のこと…」
……まさか、自分からここに来たの?
兄貴に認めてもらいたくて自分からうちのチームに顔出したの?
私とのこと、真剣に考えてくれてたんだ。
ヤバイ、嬉しい。
「オミさん…」
縛りつけているロープを解いていく私を真っ直ぐに見ているオミさん。
全部取っても私に触れてくれなくて。
「オミさん」
「樹里亜待って」
そう言うとやっぱり視線は兄貴に移す。
「哲也さん、直人さん!頼むから樹里亜のこと俺に預けてくれよ?」
頭を下げるオミさんに胸がギュッと痛い。
兄貴達が認めるわけないのに、こんなになってまでもそうするオミさんの真剣な想いにただ嬉しさがこみ上げる。
「雷翔抜けろよ、登坂。そしたら考えてやる」
直人の言葉に唇を噛み締めるオミさん。
オミさんを心配して身体張ってくれる仲間がいるっていうのに、抜けるなんてありえない。
「無茶苦茶言わないでよ、直ちゃん!無理に決まってんでしょ!」
キッて直人を睨みつけると涼しい顔で「じゃ諦めろ」簡単に言った。
悔しい。
「ズルイよ、なんで兄貴達に決められなきゃいけないの?直ちゃんだってゆきみさんが雷翔の妹だったらどーするの?それでも好きな気持ちは変わらないでしょ?」
「おい、俺の許可無しでゆきみの名前呼んでんじゃねぇぞ。もしもの話は好きじゃねぇ!」
……分かって欲しかっただけなのに、そーいう気持ち。
兄貴の意味不明な独占欲に余計に悲しくなった。
「樹里亜、お前達が揉めることはねぇ」
優しいオミさんが余計にかっこよく見える。
早く抱きしめて貰いたいのに。
「オミさん兄貴に言っても無駄です」
「雷翔は抜けねぇ。けど俺はお前の家族も受け入れたい…」
「オミさん…」
感情が高ぶって涙が溢れる。
「出てって、ここから!二人きりにして!」
泣きながら私が叫ぶと哲也が無言で出て行った。
直人もそれに続いて、やっと昨日ぶりにオミさんに逢えた。
まだ一日とたってないのに、もう一年ぐらい逢えなかった気分で。
「オミさん…」
頬に手を添える私をグイッてやっと抱きしめてくれた。
ドクドク高鳴っている心音が聞こえて、オミさんも少し緊張してるの?って。
「樹里亜顔見せて」
頬を手で包み込むように触れるオミさんは、流れる涙をチュッて舌で拭う。
そんなんじゃ全然足りない。
「やっと逢えた」
「心配かけて悪かった」
「命が縮んだよ。責任とってくれる?」
私の言葉に優しく微笑むオミさんは、「とるよ」そう言って迷うことなく私にキスをした―――――
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