▼ 狂気な強さ3
その後はすごい闘いだった。
健ちゃんこんなに強かったんだ?って、思うけど隆二の拳は半端ないって言ってたのを思い出す。
拳が一発、二発ヒットする度、健ちゃんに痣が増えていって。
それでも互角に殴り合う二人をどうにか止めたくて。
ちょうどそこにカラカラと上履きをならして直人が私の後ろからやってきた。
「直ちゃん止めて!これどーいうこと?」
ポケットに突っ込んでる手を取って直人を引き寄せる。
「何のことだよ?」
「何のことって、なんで雷翔が私を探してるの?……オミさんがいないって、どーいうこと?」
直人が私の言葉に怪しく微笑むと、「どけ、健二郎」そう言うなり、サッと退いた健ちゃんの後ろ、隆二に向かって一発拳を叩きつけた。
2メートルぐらい後ろに吹っ飛ぶ隆二を見て「弱っ」って笑っていて。
あんなに健ちゃんが苦戦していたのに一発で倒しちゃう直人を怖いと思った。
ピクリとも動かなくなっちゃった隆二の後ろ金髪コブラがすごい目つきで直人に向かって拳を振り上げた。
でも……でも……
きっと直人にはコブラの動きがスローモーションに見えているんであろう、瞬きすらしないでコブラをよけると隆二を倒した右手でコブラの頬にまた一発見事に入った。
鼻血と口の中が切れたのか、ブホッて血を吐き出すコブラに、直人が馬乗りになって更に殴る。
「死んじゃうっ、この人死んじゃうよっ、直ちゃんっ!やめてっ!!」
大声で叫ぶと、聞こえたのか首をコキコキって鳴らして振り返る。
帰り血を浴びて真っ赤な直人は狂気だ。
私にもあの血が流れていると思うとゾッとした。
ボロボロの健ちゃんの背中にギュッと抱きついて直人から隠れる。
「直人さん、随分じゃないっすかぁ…。コイツら一応うちの幹部っすよ、どーしてくれんだよっ!」
目の前に雷翔の総長が立っていて、直人に怒鳴りつけた。
小柄な直人は直己を見上げるとフンって鼻で笑う。
「相手にならねぇな、雷翔も。退屈させんなよ、直己」
「臣はどこだ?」
「知らねぇよ。先に手出したのはそっちだろ、樹里亜たぶらかしやがって、ただじゃおかねぇぞ。これ以上俺を怒らせんじゃねぇ、クソが」
なんで知ってるの?
「どうしてみんな知ってるの?」
健ちゃんに聞くと、切なく微笑んで私の頭を撫でた。
「オミさんどこっ?直ちゃん!」
「だから知らねぇ。樹里亜お前、俺らの妹の分際でよくも雷翔に騙されやがったな?恥を知れよ」
酷い!恥だなんて。
「馬鹿直人!最低っ!!」
私のせいで、私のせいでオミさんが……。
どこ行ったの?
「健ちゃんお願いっ!どこにいるか教えてっ?」
絶対兄貴達がどこかに隠したんだって。
それで私を探しに来たんでしょ、雷翔が。
何が何でも探し出さなきゃ!
「……分からへんねん、すまん。樹里亜…」
言えないのか、知らないのか。
私は健ちゃんから離れて一人学校を飛び出した。
後ろから「樹里亜ッ!」って健ちゃんの声だけが聞こえていた。
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